グローバル企業がカーボンニュートラルを推進する際、各地域の排出係数や算定基準などの規制に合わせて異なる対応を取る必要があります。しかし、各拠点が個別の対応を取ることで、ITの利活用や運用フローの統制、一貫性を確保が難しくなり、本社である日本側で各拠点の規制を十分に把握しきれないケースがよく見られます。
本記事ではカーボンニュートラルにおけるグローバル展開の実践的なアプローチと、成功させるポイントを解説します。
グローバル企業がカーボンニュートラルを推進する際、各地域の排出係数や算定基準などの規制に合わせて異なる対応を取る必要があります。しかし、各拠点が個別の対応を取ることで、ITの利活用や運用フローの統制、一貫性を確保が難しくなり、本社である日本側で各拠点の規制を十分に把握しきれないケースがよく見られます。
本記事ではカーボンニュートラルにおけるグローバル展開の実践的なアプローチと、成功させるポイントを解説します。
カーボンニュートラルにおけるグローバル展開を進める際は、具体的に何から始めればよいのでしょうか。ここでは、担当者が実施すべき取り組みを3つ紹介します。
カーボンニュートラルを実現するためには、まず短期(1-2年)・中期(2-5年)・長期(5〜10年)の3段階で計画を立案する必要があります。
短期計画(1-2年)は、カーボンニュートラルを推進する基礎固めの期間です。この段階では、まず現地の環境規制や基準を調査し、本社方針と照らし合わせて遵守すべき要件をリスト化します。現状認識として、各拠点が使用しているエネルギー源や、原材料・製造・物流における排出量をデータとして収集し、各拠点でのCO2排出量の測定体制を構築します。
ここでのポイントはScope1(直接排出)とScope2(間接排出)を中心とした、排出量の把握や可視化です。どのプロセスからCO2が多く排出されているのかを明確にし、優先順位をつけて削減策を講じます。
中期計画(2-5年)は、CO2排出量削減の本格的な取り組みを展開する期間です。資源計画を立て、現地条件に適した太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの導入を進めていきます。ポイントはCO2排出量25%削減を目標とするなど、具体的な数値目標の設定です。サプライヤー選定や物流プロセスを見直し、環境負荷の少ない選択肢を採用しましょう。
長期計画(5〜10年)では、全社的な構造の改革を進める期間です。たとえば、下記のような取り組みが挙げられます。
環境に優しい材料や製造プロセスを採用し、環境配慮型の新製品開発に取り組む
取引先やパートナーとも協力し、サプライチェーン全体での取り組みを推進する
再生可能エネルギーの利用を最大化し、足りない部分はカーボンオフセットを組み合わせ、カーボンニュートラル(ネットゼロ)をめざす
各拠点のCO2排出量の正確な把握には、拠点ごとにバラバラに管理されているデータをクラウド上に集約して、本社側で一元管理を行います。海外拠点では、データ収集プロセスを整備し、標準化されたテンプレートやクラウドベースのITツールを活用することが重要です。
これにより、本社側で異なる単位や形式のデータを統一し、各拠点のデータをダッシュボードで視覚化することで、全体の進捗状況を把握しやすくなります。
海外拠点の担当者は、現地スタッフに対し、温暖地球化の仕組みやカーボンニュートラルの意義、自社が果たすべき役割などの研修を実施します。特に、CO2排出量の測定方法やデータ入力、報告手順など、実務に直結する技術的な教育を行い、運用の精度向上を図ることが大切です。
また、本社の基準と各国の環境規制や支援制度に関する知識を提供し、拠点間のギャップを解消します。現地スタッフが自信を持って業務を遂行できる環境を整えて、拠点全体での意識と行動の統一を図りましょう。
カーボンニュートラルのグローバル展開を成功させるためには、下記の3つを押さえる必要があります。
カーボンニュートラルを推進する際は、現地の規制や市場動向に精通した信頼できるパートナーの存在が不可欠です。本社と海外拠点の連携支援だけでなく、現地の文化やビジネス慣習を理解した上でのアドバイスやサポートが可能なパートナーを探しましょう。各国・地域には固有の環境規制や市場特性、技術水準があります。これらを熟知しているパートナーの知見を活用すると、カーボンニュートラルの取り組みを推進しやすくなるでしょう。
カーボンニュートラルのアプローチは、各拠点の状況によって大きく異なります。たとえば、工場設備の老朽化の度合いや、利用可能な再生可能なエネルギーの種類、現地の環境規制、技術者の習熟度などが想定されます。そのため、本社が定めた方針や目標を一律に適用せず、各拠点の状況に応じた柔軟な対応が必須です。
また、CO2の排出量を可視化し、そのデータに基づいた削減プランの検討を行うことが重要です。その際、CO2削減だけでなく、生産能力を維持しながら効率的なCO2削減を目指すプランニングと実行計画が必要です。
さらに、海外拠点で新たな条例や規制の変更があった際に、その内容や要件を本社と速やかに共有できる仕組み・体制の整備が必要です。円滑な情報共有により、要件に沿った対策案を立案できます。PDCAサイクルを継続的に実施し、現場からの改善提案を積極的に取り入れ、全社を巻き込んだ形で取り組むことで、各拠点の状況に応じた対策を講じられるでしょう
カーボンニュートラルへの取り組みには、大規模な投資や業務プロセスの変更、場合によっては事業構造の転換が必要です。カーボンニュートラルを推進するためには、経営層が強いリーダーシップを発揮し、明確な方針を示すことが大切です。
カーボンニュートラルのグローバル展開を成功させるためには、各拠点が分散して活動しないで、共通の方向性のもとで取り組む必要があります。拠点間での優れた事例を共有したり、グローバル会議を定期的に開催したりといった取り組みを継続して実施しましょう。
KDDIは、2030年度末までにKDDIグループ全体のCO2排出量(Scope1、2)の実質ゼロ、2040年度末までに「ネットゼロ」の実現をめざしています。ネットゼロとは、Scope3を含んだサプライチェーン全体のCO2排出量を実質ゼロにする取り組みです。
2013年11月にCO2排出量削減への寄与を目的とした太陽光発電事業をスタートしました。自社保有地の一部に太陽光発電設備を建設し「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」に基づいて電力会社向けに発電した電力を販売しています。
KDDI と au エネルギー&ライフは、2023年5月にCO2 排出量実質ゼロの「サステナブル基地局」の運用を開始しました。晴天の日中であれば、太陽光発電で自律的に電源を確保し、1局の基地局運用に必要な電力をすべて供給できます。
また、夜間はカーボンフリープラン( au エネルギー&ライフが提供しているCO2 排出量が実質ゼロになるプラン)による電力供給に自動で切り替わるため、24時間 365日でCO2排出量を抑えられます。
カーボンニュートラルのグローバル展開を成功させるには、短期・中期・長期の計画立案や、データ統合、現地スタッフの教育といった具体的な取り組みが必要です。本記事では、各拠点の状況に合わせた柔軟な対応や、経営層の明確なビジョンの重要性を解説しました。
海外拠点の担当者がカーボンニュートラルにおけるグローバル展開を進める際は、段階的な導入計画の立案(短期・中期・長期の目標設定)から始める必要があります。全拠点でのCO2排出量を正確に把握すれば、効果的な削減策を検討できるでしょう。
次回は「CO2排出量の可視化を実現するソリューション」に焦点をあて、データ収集や報告・監視など運用を効率化する方法をご紹介します。ぜひご覧ください。
CO2排出量の可視化、分析、CO2削減のための打ち手の検討、削減施策の実施まで、お客さまビジネスにおけるカーボンニュートラルの実現をご支援いたします。
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